2026.07.26

"AI音楽っぽさ"を消す、実践テクニック5選✏️

執筆: 輪廻タヲ ・ AIを活用した音楽・イラスト・映像作品を制作するコンテンツクリエイター

"AI音楽っぽさ"を消す、実践テクニック5選✏️

前回の記事で、AI生成曲が「バレる」理由を4つ挙げました。
コード進行の既視感、楽器の質感、歌詞・発音の不自然さ、ミックスの整いすぎ感。

今回はその裏返しです。
それぞれの弱点に対して、特に効果の大きい実践テクニックを5つ紹介します。

①高音のシャリシャリ感は、専用ツールで除去する

AI生成音源特有の高域アーティファクト(シャリシャリした金属感)は、実はEQで削ろうとしてもあまりうまくいきません。
劣化が発生している帯域や区間が曲によってバラつくため、一律にEQで削ると、必要な音の輪郭まで一緒に失われがちです。

そこでおすすめなのが、Suno生成音源の劣化を自動解析して補正する専用ツール「Suno Artifact Cleaner」です。
音源をアップロードすると、後半劣化スコアや主な劣化原因を自動診断し、「AI Glass Reducer(金属感・ガラス感を抑える)」「Vocal De-Harsh(サ行と刺さりを抑える)」といった専用プリセットで補正してくれます。
処理はすべてブラウザ内で完結し、音声ファイルが外部に送信されることもありません。

Suno Artifact Cleanerの画面

②ボーカルを外部の声に置換する

AI生成ボーカルは、似たような声質のデータベースから出力されやすく、他の生成曲と声が被りやすいという弱点があります。
ここで有効なのが、ボーカルを別の声に置き換える方法です。
具体的には、主に3つのアプローチがあります。

RVC(Retrieval-based Voice Conversion) は、学習済みのボイスモデルを使って任意の声を別の声に変換できる、汎用のAIボイスチェンジャーです。
無料で使え、ボーカロイド音源用に作られたモデルも配布されているため、AI生成ボーカルをそのままボカロ風の声質に転用することもできます。

Sunoを使っているなら、純正機能で完結させる方法もあります。
好きな声質のサンプル曲を生成し、「Persona」機能でその声を保存。
元の曲に対してCover機能を使い、そのPersonaを適用すれば、メロディや歌い回しはそのままに声質だけを差し替えられます。

さらに、Sunoの「Stem」機能を使えばボーカルパートだけを個別に抽出できるので、抽出したボーカルを外部のボイスチェンジャーに通す、という組み合わせ方も可能です。
どの方法も、AI生成のメロディ・歌い回しはそのままに、声質だけを差別化できるのが利点です。
「似たようなAI声」から抜け出す、手軽で効果の大きい方法です。

③MIDI書き出しで部分的に打ち込みを加える

Sunoは「固定テンポでの書き出し」と「MIDI書き出し」に対応しています。
これを使えば、生成した楽曲のテンポをDAWのプロジェクトと同期させ、パートの一部を自分で打ち込み直すことができます。

生成されたアレンジをそのまま使うのではなく、一部を手打ちのMIDIに差し替えることで、リアレンジの自由度が大きく広がります。
コード進行やフレーズに手を加えるだけで、既視感のあるパターンから抜け出しやすくなります。

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④複数の生成テイクを組み合わせる

Sunoで同じプロンプトから複数回生成すると、テイクごとに歌の抑揚やメロディの解釈が微妙に変わります。
このテイクをパーツ単位で組み合わせ、良いところ取りでリアレンジするのも有効な手段です。

歌の生成ミスや、メロディの弱い部分だけを別テイクの良い部分に差し替える、といった柔軟な作り込みができます。
1回の生成で完成させようとせず、複数テイクを素材として扱うことで、アレンジの自由度が上がります。

⑤ステムからDAWで積極的にミキシングする

生成された音源をステム(パートごとの音源)で書き出し、DAW上で自分の手でミキシング・マスタリングを行います。
これは以前の記事(AI音楽にミックスやマスタリングは必要?)とも重なる話です。

ここで効くのが、普段DTMで使っているエフェクトやプラグインをそのまま活用できることです。
自分の手持ちのサウンドメイクをAI音楽にも組み込めるので、すでに自分の音を持っているDTM系の作家ほど、この工程が武器になります。

歪み、モジュレーション、空間演出(残響)といった音響的な効果には、非常に大きな優劣の差が存在します。
そしてAI生成音楽は、この領域でどうしても質が低くなりがちです。

ミックスというと、音の配置やコンプレッサー、EQなど、あくまで「調整」の側面にフォーカスが行きがちです。
でも実際には、「心地よい音色を作る」「美しい響きを作る」「奥深いモジュレーションを加える」といった、音楽的な響きそのものを作り込むアプローチも、ミックスの工程でDAW内でできることは非常に多いです。

人は、音楽の前に「音」を聴きます。
その音楽が良い音で鳴るのか、悪い音で鳴るのか。
これは、ミックスの工程にすべてがかかっていると言っても過言ではありません。

そこに人の手で、音楽的な目線からアプローチできるということ。
それは、その曲をまるで違うレベルに引き上げられるということでもあります。

おわりに

専用ツールでのノイズ除去、声の置換、MIDIでの部分打ち込み、複数テイクの組み合わせ、ステムからのミキシング。
どれもゼロから作り直す作業ではなく、生成された素材に対する「手直し」です。

でもこの手直しの積み重ねが、「AIが吐き出したもの」と「自分の作品」の境界線になります。
AIっぽさを消すというのは、AIを否定することではなく、AIが作った素材を自分の手でどこまで引き受けるか、という話なのだと思います。

輪廻タヲ

輪廻タヲ / Rinne Tao

AIを制作に活用するコンテンツクリエイター。音楽、イラスト、映像作品を中心に発信しています。

最新作品やAIに関する考察はXで発信しています。

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